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武士同士の対決は実と実との対決であるが、忍びが戦うときは常に自分は実であり敵は虚である。「正忍記」その5
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正忍記 その6/極秘伝の解説

〈武道選書〉
忍術伝書 正忍記


藤一水子正武著
中島篤巳解読・解説
新人物往来社 
平成八年八月二十日初版発行




以下、中島篤巳氏による解読・解説。





極秘伝の解説


正忍記序と初巻とは主として忍びの技術面について、また中巻は相手の心理を含む忍びの周辺環境について、そしてこの下巻は極秘伝であり、忍びの心に関する奥義ともいえる内容で盛られている。

具体的には心得七項目と奥書から成っている。

まずは序論である。

そのしめくくりで文面をとらえるのではなく、行間をしっかり読み込むようにと強調している。

「忍びの習いは千変万化であり、とても伝えもって教えても教えきれるものではない。

ただ、大事の一つは常に国々所々をよく知っておくこと。 その土地の人の気持ちを覚って、上手に対応すれば目的は叶う。 心智を働かせてその地をよく知れば、道理至極なことを自然に行うことが出来、目には見えない人の心の門、すなわち警戒心という関所の一つを通過することが出来る。

忍びの奥義は智恵にあり、その“心智の明らかなる”巻物を巻けば一寸四方に収まるが、これをひもとけば上下四方の六方に展開する巨大な世界がある。

これさえしっかりしていれば、必要な時に必要なものが得られる。

これからの条項は秘密の奥義を修得するためのものである。

しっかりと文字二の奥にあるものを見極めなければならない」



ここには術の根底に禅の思想が流れていることがわかる。

序の要点は「書は言を尽くさず、言人(心)を尽くさず」、すなわち達磨の四聖句の中の一つ「不立文字」にある。 禅は物事を解釈するにあたり「放下着」が鉄則である。 下着とは固定観念を意味する。 下着を放つ、すなわち固定観念にとらわれない思考過程である。 これは忍術の根本原理であり、忍びの倫理感や哲学を形成している。 

この禅の影響こそ日本の忍術の特徴であり、中国の「間」とは根本的に異なる点である。


忍びの世界に禅の思想が入り込んだのは厳しい戦国期とは考え難く、比較的余裕が出来た安土桃山時代に入ってからのことと思われる。

「高越下に入るの習い」の項に「古流」という用語が見られるが、この古流の意味は戦国期以前の忍びを意味すると考えられる。 換言すれば、中世の修験、山岳密教、陰陽道を背景に成長した忍びが古流であり、これに精神面を重視した「禅の思想」を加味して完成したものがこの伝書にみられるような体系的日本伝忍術“いわゆる忍術”であると考えてよいだろう。

(『正忍記』、161~162頁)



参考:「不立文字」(ふりゅうもんじ)

「百学連環」を読む:不立文字
2012年 10月 12日 金曜日 筆者: 山本 貴光
http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/2012/10/12/%E7%99%BE%E5%AD%A6%E9%80%A3%E7%92%B0%E4%B8%8D%E7%AB%8B%E6%96%87%E5%AD%97/



参考:「放下着」(ほうげじゃく)

放下著(五家正宗贊)
http://www.rinnou.net/cont_04/zengo/060801.html


『正忍記』
名取三十郎正澄/藤一水正武(ふじのいっすいまさたけ)丈夫著
巻頭言 勝田何救斎養真
延宝九年(一六八一)

解読・解説 中島篤巳
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[ 2013年03月19日 23:00 ] カテゴリ:正忍記 | TB(0) | CM(0)
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