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武士同士の対決は実と実との対決であるが、忍びが戦うときは常に自分は実であり敵は虚である。「正忍記」その5
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正忍記 その9/心相の事の解説

〈武道選書〉
忍術伝書 正忍記


藤一水子正武著
中島篤巳解読・解説
新人物往来社 
平成八年八月二十日初版発行



以下、中島篤巳氏による解読・解説。



心相の事の解説



術をかけるために相手の感情や性格を把握する方法である。

「ここは非常に大切である。 

人相を読むことは伝法をもって知ることが出来るが、この心相を知る方法は教えられ、さらに人生経験をもとに推察するものである。 

人相は当たらないことが多い。 

しかし心相はよく当たるので、読み違えるようなことがあってはならない。 

まず自分の生来の性格を考えてみよう。

それには偏よりがあり、偏りが個性を特徴付けていることに気付くだろう。 この偏りこそ術策を仕掛ける目標である。

偏りには七情、すなわち喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲がある。

これらは生まれつき備わっているもので、全く同じものを仏法では喜・怒・憂・思・悲・恐・驚という。

生まれながらにこの七情がすべて完璧である者はいない。

全部が完璧なら聖人である。

この七情は成長とともに少しずつ変わり、本人の生活環境によってそれぞれの情が、本人に丁度良いように他の六情とのバランスを取りながら形成されてゆく。 

急変や折節につけて他の六情が棄(す)たり、一情のみ突出し、これが本人の俗性となるのである。


要はある条件下に置かれた相手の、その環境に反応して表す突出した感情を素早く見抜くことが大切で、その感情の逆手を取って先手を打つことが、この“心相の事”の真髄である。

ただし、その感情の描出にはいろいろな原因がある。

たとえば怒り一つを取り上げてみても、争って怒る、損をして怒る、世を恨んで怒るなど感情を描出するまでの過程は異なっているので、当然のことながら、その原因、過程を見極めながら対応しなければならない」




人間の感情や性格を実にうまく概念的にとらえている項である。

心理学では、性格とは「それぞれの個人を特徴付けている、持続的で一貫した行動様式」と意味づけており、これがポイントである。

性格が「持続的で一貫した行動様式」であるが故に、冷静に相手の性格をうまく利用し続ければ「常」に先手を取り、自分に都合のよい誘導が可能なわけである。

性格には価値の概念が生きている。

したがって二度と生還出来ない死間や決死的な目的を持って行動する場合はもちろんのこと、普通に人をうまく利用する時にも、相手の価値観を考慮しながら策を仕掛けなければならない。

人間は理性よりも感情に左右される。

見かけは穏やかでも、高まる感情は確実に理性を凌(しの)ぐ。

欲、愛、憎しみなど七つの感情を刺激し、機を逃さず畳み込めば、相手は確実に術中に落ちるだろう。

正忍記の行間に潜む内容の深さと心理戦は絶妙である。

心理戦に関しては他の伝書を遥かに凌いでおり、現在でも学ぶべき点が多い。


(『正忍記』、176~177頁)






『正忍記』
名取三十郎正澄/藤一水正武(ふじのいっすいまさたけ)丈夫著
巻頭言 勝田何救斎養真
延宝九年(一六八一)

解読・解説 中島篤巳

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[ 2013年04月04日 16:34 ] カテゴリ:正忍記 | TB(0) | CM(0)
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